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12 原則2「優しさと称賛を育む」- 侮辱を打ち消す最強の解毒剤

12 原則2「優しさと称賛を育む」- 侮辱を打ち消す最強の解毒剤

もし、夫婦関係を着実に蝕んでいく「毒」があるとしたら、その最も強力な「解毒剤」は何だと思いますか?心理学者のジョン・ゴットマン博士は、40年以上にわたる科学的調査から、その答えを明確に示しています。それが、結婚生活を成功させる七つの原則の2番目、「優しさと称賛を育む(Nurture Your Fondness and Admiration)」という習慣です。これは単なる精神論ではありません。夫婦関係の破滅を招く「四騎士」の中でも、特に致命的とされる「侮辱」に対する、科学的に証明された唯一の対抗策なのです。今回は、この原則がなぜそれほど強力なのか、そして今日からどのように実践できるのかを探っていきましょう。


関係の生死を分ける「優しさと称賛システム」

ゴットマン博士の研究では、どんなに冷え切ってしまったように見える関係でも、その根本に「優しさと称賛」の火種が少しでも残っていれば、修復は可能であるとされています。

博士が紹介する、ある医師の夫婦の事例は非常に象徴的です。仕事に没頭し家庭を顧みない夫ロリーと、彼に絶望した妻リサ。関係は破綻寸前でした。あるクリスマスの日、リサが子供たちを連れて病院にいる夫にピクニックを届けたとき、ロリーは「なんて迷惑なことをするんだ。恥ずかしい」と彼女を罵倒しました。彼の心遣いは、妻ではなく仕事仲間や後輩にしか向けられていなかったのです。

しかし、後のカウンセリングで、博士が二人の出会いや初デートについて尋ねたとき、ロリーの表情は一変します。彼は顔を輝かせ、当時リサを射止めるためにいかに自分が情熱的であったかを、まるで昨日のことのように語り始めました。その様子を見ていたリサも、思わず微笑み、二人は自然に手を握り合いました。

このエピソードが示すのは、二人の心の奥底には、**相手に対する根本的な好意や尊敬の念(優しさと称賛システム)**がまだ残っていたということです。たとえ分厚い対立や敵意の層に覆われていても、このシステムが機能している限り、結婚生活は救済可能だとゴットマン博士は言います。


過去の思い出が未来を映す鏡になる

あなたがパートナーとの過去をどのように語るかは、二人の未来を驚くほど正確に映し出します。ゴットマン博士によれば、**夫婦が自分たちの関係の歴史についてポジティブな見方をしている場合、その二人が将来も幸せである確率は94%**にも上るそうです。

これは、二人の関係を測る一種の健康診断と言えるでしょう。

  • 〇 幸福な夫婦の語り口

    彼らは出会いや結婚当初の思い出を、生き生きと鮮やかに語ります。「あの時の彼の言葉が本当に嬉しかった」「彼女の笑顔に一目惚れしたんだ」といった具体的なエピソードと共に、当時のポジティブな感情が蘇ってきます。困難な時期についても、「二人で乗り越えたからこそ、今の私たちがある」と、絆を強めた経験として捉えます。

  • × 不幸な夫婦の語り口

    彼らの記憶は色褪せ、歪んでしまっています。楽しかったはずの出来事も、「でも、あの時あなたは…」とネガティブな側面が強調されがちです。最悪の場合、相手の良いところを一つも思い出せなかったり、記憶自体が曖昧になっていたりします。これは、現在の不満が過去の記憶までをも汚染してしまっている危険なサインです。

二人の歴史をポジティブに捉え直すことができれば、それは関係に強力な緩衝材(バッファ)をもたらします。困難な壁にぶつかったときも、「私たちはこれまでも大丈夫だった。これからも乗り越えられる」という確信が、二人を支えてくれるのです。


今日からできる、侮辱への解毒剤の作り方

では、具体的にどうすれば「優しさと称賛」を育むことができるのでしょうか。鍵は、パートナーの良い点や感謝すべき行動を意識的に探し、それを言葉にして伝えることです。

この習慣は、なぜ「侮辱」への解毒剤になるのでしょうか。それは、根底にある尊敬の念が、対立時における相手への人格攻撃を防いでくれるからです。「この人は尊敬に値する素晴らしい人間だ」という思いが心にあれば、意見が食い違ったとしても、「なんて馬鹿なんだ」というような侮辱的な思考には至りにくくなります。

〇 「夕食の片付け、ありがとう。すごく助かったよ。」

〇 「今日の服、とても似合っているね。素敵だよ。」

〇 「いつも子供たちのことを一番に考えてくれて、本当に尊敬する。」

これらの言葉は、相手の中に「自分は大切にされている」「評価されている」という安心感を育てます。そして、この安心感こそが、良好な関係を維持するための土台となるのです。

「優しさと称賛」は、持って生まれた才能ではありません。それは、意識と訓練によって誰もが身につけることができる**「技術」**です。この技術を日々磨き、実践していくこと。それこそが、夫婦という船が人生の嵐を乗り越え、長く幸せな航海を続けるための、最も確実な方法なのです。


まとめ

  • 「優しさと称賛を育む」は侮辱への科学的に証明された解毒剤
  • 心の奥底に好意や尊敬の念が残っていれば、関係は修復可能
  • 過去をポジティブに語れる夫婦は、将来も幸せである確率94%
  • 日常の小さな感謝や称賛の言葉が、関係の土台を強化する
  • 優しさと称賛は「技術」として誰でも身につけられる

参考文献

“The Seven Principles for Making Marriage Work”, John M. Gottman, Ph.D., 1999

更新日: 2026年1月10日

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