15 夫婦喧嘩の2つのタイプ:「解決可能な問題」と「永続的な問題」の見分け方
15 夫婦喧嘩の2つのタイプ:「解決可能な問題」と「永続的な問題」の見分け方
「また同じことで喧嘩している…」
「どうしてこの問題だけは、いつまで経っても解決しないんだろう?」
夫婦やパートナーと生活する中で、このように感じた経験はありませんか。どんなに仲の良いカップルでも、意見の対立は避けられません。しかし、その「対立」や「喧嘩」には、実は性質の異なる2つのタイプがあることをご存じでしょうか。
人間関係、特に夫婦関係を科学的に分析してきたジョン・ゴットマン博士は、全ての夫婦間の対立は**「解決可能な問題」と「永続的な問題」**の2つに分類できると発見しました。この違いを理解することは、無駄なエネルギーを費やすことなく、二人の関係をより良く保つための重要な第一歩となります。
今回は、この2種類の問題の違いと、あなたの目の前にある問題がどちらのタイプなのかを見分ける方法について、詳しく見ていきましょう。
対立の約7割は解決しない?「永続的な問題」との付き合い方
まず驚くべき事実からお伝えすると、ゴットマン博士の研究によれば、**夫婦間の対立の実に69%が「永続的な問題」**だと言われています。 1 これは、性格や育ち、価値観といった、お互いの根本的な違いに根差した問題です。つまり、生涯を通じて、形を変えながら二人の間に存在し続ける可能性が高い問題なのです。
例えば、以下のような対立は「永続的な問題」の典型です。
- 子どもについて:メアリーは赤ちゃんが欲しいと願っていますが、夫の健太は「まだ準備ができていない」と感じており、自分が父親になれるかどうかも確信が持てません。
- お金の使い方:夫の拓也は将来のために節約を重視しますが、妻の沙織は「今を楽しむためにお金を使いたい」と考えています。
- 生活習慣:夫の徹は非常にきれい好きで整理整頓を徹底したい一方、妻の由美は大らかで、多少散らかっていても気にしません。
これらの問題は、どちらが正しくてどちらが間違っているという話ではありません。大切なのは、これらの問題を無理に「解決」しようとしないことです。
幸福な結婚生活を送っているカップルは、こうした永続的な問題が存在することを認め、それをユーモアのセンスで乗り越えたり、お互いの妥協点を探ったりしながら、問題と「うまく付き合っていく」方法を身につけています。
行き詰まり(グリッドロック)の危険なサイン
しかし、この「永続的な問題」への対処を誤ると、関係は**「グリッドロック」**と呼ばれる、完全な行き詰まり状態に陥ってしまいます。これは、対話が完全に停止し、感情的な距離が生まれ、お互いを傷つけ合うだけの不毛な状態です。
あなたの関係がグリッドロックに陥っていないか、以下のサインを確認してみましょう。
- 同じテーマで議論を繰り返すが、全く進展がない。
- その問題を考えると、拒絶されたような、傷ついた気持ちになる。
- 会話の中に、ユーモアや笑顔、思いやりが全く見られない。
- お互いの立場がどんどん硬化し、妥協の余地がなくなっていく。
- 最終的に、その話題に触れること自体を避け、感情的に心を閉ざしてしまう。
もしこれらのサインに心当たりがあるなら、その対立の根底には、お互いの**「叶えられていない夢」**が隠されている可能性があります。その問題がなぜあなたにとって重要なのか、その背景にある人生の希望や願いを理解し合うことが、行き詰まりを乗り越える鍵となります。
話し合えば変わる「解決可能な問題」
一方、対立の残り約31%は**「解決可能な問題」**です。これらは永続的な問題ほど根深くなく、特定の状況に限定されていることが特徴です。根本的な価値観の対立ではないため、お互いの歩み寄りや工夫によって解決することが可能です。
例えば、こんな状況を考えてみましょう。
-
悪い例(永続的な問題に発展しかねない)
妻:「あなたの運転はいつもスピードが速すぎて怖い!私のことなんてどうでもいいんでしょ?(人格への非難)」
夫:「君こそいつも心配性でうるさい!俺の運転が信用できないのか?(信頼への攻撃)」
→この場合、運転という行為が「信頼」や「思いやり」といった象徴的な意味を持ち、お互いの人格攻撃に発展しています。これは「永続的な問題」です。
-
良い例(解決可能な問題)
妻:「今朝、会社に間に合うか不安で…。もう少しだけ早く家を出ることはできないかな?(具体的な状況への対処を提案)」
夫:「ごめん、焦らせたね。明日は僕が朝食の片付けをするから、その間に準備してくれる?(具体的な解決策を協議)」
→この場合、対立は「朝の通勤」という特定の状況に限定されており、お互いを非難するのではなく、協力して解決策を探そうとしています。これが「解決可能な問題」への正しいアプローチです。
「解決可能な問題」は、放置すれば恨みや不満が募り、やがて「永続的な問題」へと悪化してしまう危険性もはらんでいます。しかし、早い段階で適切に対処すれば、二人の絆を深める良い機会にもなり得ます。
あなたの問題はどっち?見極めのヒント
最後に、ご自身の抱える問題がどちらのタイプかを見分けるためのヒントをいくつかご紹介します。
- 問題の「根っこ」を考える
- 〇 解決可能な問題:対立の原因が「特定の状況」や「一時的な出来事」にある。(例:「夫が最近忙しくて、家事を手伝ってくれない」)
- × 永続的な問題:対立の原因が「性格」「価値観」「ライフスタイル」といった根本的な違いにある。(例:「夫は根っからのインドア派で、私はアウトドア派だ」)
- 感情の「温度」を測る
- 〇 解決可能な問題:比較的冷静に話し合うことができ、特定のテーマに集中できる。
- × 永続的な問題:話していると、強い怒りや悲しみ、絶望感といった激しい感情が湧き上がり、人格攻撃になりやすい。
- 問題の「広がり」を見る
- 〇 解決可能な問題:その問題が、生活の他の側面にまで悪影響を及ぼすことは少ない。
- × 永続的な問題:一つの問題が、お金、子育て、セックスなど、あらゆる側面での対立の火種となっている。
夫婦間の対立に直面したとき、まずは一歩引いて、その問題が「解決可能」なのか「永続的」なのかを見極めてみてください。
それは、力ずくで変えようとすべき問題でしょうか。それとも、ユーモアと知恵で受け入れ、うまく付き合っていくべき問題でしょうか。
この見極めこそが、不毛な争いを減らし、二人の関係をより穏やかで幸福なものへと導くための、最も重要な羅針盤となるのです。
まとめ
- 夫婦間の対立は「解決可能な問題」と「永続的な問題」の2種類に分けられる
- 対立の69%は「永続的な問題」で、完全な解決は難しい
- 永続的な問題はユーモアと妥協で「うまく付き合う」ことが重要
- 行き詰まり(グリッドロック)のサインに注意し、背景にある夢を理解する
- 解決可能な問題は早期対処で二人の絆を深めるチャンスになる
参考文献
Gottman, J. M., & Silver, N. (2015). The Seven Principles for Making Marriage Work. Harmony Books. p. 100.
更新日: 2026年1月10日