悩ましげに窓の外を見る女性

18-2 夫婦関係を蝕むポルノの問題 - なぜ話し合う必要があるのか

18-2 夫婦関係を蝕むポルノの問題 - なぜ話し合う必要があるのか

現代社会において、スマートフォンやインターネットは私たちの生活に深く浸透し、夫婦関係にも様々な影響を与えています。その中でも、特にデリケートで多くのカップルが向き合うのを避けてしまいがちなテーマが「ポルノグラフィ」の問題です。

「個人の自由」「ただの娯楽」と片付けてしまう前に、一度立ち止まって考えてみませんか?長年にわたり数多くのカップルを科学的に研究してきたジョン・ゴットマン博士は、ポルノの利用が夫婦関係に深刻な影響を及ぼす可能性があると警鐘を鳴らしています。この記事では、博士の研究を基に、なぜポルノが問題になり得るのか、そして健全な関係を築くために何が必要なのかを心理学的な観点から探っていきます。

ポルノがもたらす4つの弊害

ゴットマン博士は、ポルノを**「本質的に反ロマンティック(inherently anti-romantic)」**なものだと指摘しています。なぜなら、ポルノは非人間的で、相手を尊重する親密な関係性とは相容れない性質を持つからです。特に、パートナーが一人で習慣的にポルノを視聴している場合、研究では次のような弊害が報告されています。

① 性的なコミュニケーションの減少

ポルノは、パートナーとの対話や相互理解を必要としません。それは一方通行の刺激であり、相手の欲求や感情への配慮を学ぶ機会を奪います。その結果、現実の性生活においても、言葉や身体を通じた繊細なコミュニケーションが失われ、無機質なものになってしまう危険性があります。

② 相互の満足度の低下

心理学における「条件づけ」という観点から、この問題を考えることができます。特定の映像やファンタジーに対して繰り返し性的興奮を経験すると、脳内の快楽物質(ドーパミンなど)の働きにより、その刺激なしでは満足しにくい身体になってしまうことがあります。

その結果、パートナーとの現実のセックスでは物足りなさを感じたり、ポルノで見た特定の行為を相手に求めたりするようになります。しかし、パートナーがそのファンタジーを共有していなければ、一方にはプレッシャーが、もう一方には拒絶されたという傷が残り、結果的に誰も幸せにならないという状況に陥ります。

③ セックスの頻度の減少

意外に思われるかもしれませんが、ある研究では、夫が一人でポルノを習慣的に利用している夫婦は、そうでない夫婦に比べて、実際のセックスの頻度が少なくなる傾向が示されています。これは、性的欲求がポルノによって満たされてしまい、パートナーとの親密な関係を築く動機が薄れてしまうためと考えられます。

④ 裏切りのリスク増

ゴットマン博士は、ポルノの利用がより深刻な裏切り行為への**「入り口(step one)」**になり得ると警告しています。ポルノ視聴が、オンラインチャットや特定の性的嗜好を共有する他者との出会いへと発展し、最終的に性的な浮気に繋がるケースは少なくありません。

沈黙は危険信号 - オープンに話し合う勇気

これらの弊害を踏まえた上で、ゴットマン博士が最も重要だと強調するのが、**「夫婦間の明確な合意」**です。

「明確な合意のないポルノの使用は、実際には関係における裏切りの一形態である」

この言葉が示すように、ポルノの問題は個人のプライバシーの領域に留まらず、二人の信頼関係そのものを揺るがすテーマなのです。だからこそ、見て見ぬふりをしたり、タブー視したりするのではなく、勇気をもって話し合う必要があります。

× 悪い対話の例

「ポルノなんて見てるの?信じられない。私のこと、もう魅力的に感じないんでしょ?(非難、決めつけ)」

「これは個人の自由だろ。いちいち監視するなよ。(問題のすり替え、防御)」

〇 良い対話の例

「最近、あなたがポルノを見ていることを知って、少し不安に感じているんだ(主語を私にする)。二人の関係にどんな影響があるか、一度ゆっくり話せないかな?(関係性への影響を問う)」

「君がそう感じていたんだね。僕にとっては単なる娯楽のつもりだったけど、君が不安に思うなら、二人のためのルールを一緒に考えたい。(相手の感情を受け止め、協力を申し出る)」

ポルノを視聴すること自体が絶対的に悪いわけではありません。問題なのは、その行為がパートナーにどのような影響を与えているかを無視し、一方的な秘密にしてしまうことです。

もしこの問題が、個人のコントロールを超えた「依存(compulsion or addiction)」のレベルに達している場合は、夫婦間の努力だけでは解決が困難かもしれません。その際は、アルコール依存など他の依存症と同様に、専門のカウンセラーやセラピストの助けを求めることが不可欠です。

テクノロジーがもたらしたこの新たな課題に対し、お互いを非難するのではなく、二人の信頼と親密さを守るという共通のゴールに立って向き合うこと。それこそが、現代の夫婦に求められる新しいスキルなのかもしれません。

更新日: 2026年1月10日

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