21 終わらない夫婦喧嘩の正体は?対立の裏に隠された「夢」を乗り越える心理学
21 終わらない夫婦喧嘩の正体は?対立の裏に隠された「夢」を乗り越える心理学
「子供が欲しいあなたと、欲しくないパートナー」「信心深いあなたと、無神論者のパートナー」
夫婦でいると、どうしても意見が合わず、妥協点が見つからない問題に直面することがあります。何度話し合っても平行線のまま、お互いに「どうして分かってくれないんだ」と不満が募るばかり。このような、解決不可能に思える対立が慢性化し、身動きが取れなくなった状態を、心理学者のジョン・ゴットマン博士は**「行き詰まり(グリッドロック)」**と呼んでいます。
今回は、この「行き詰まり」の正体と、その根底に隠された心理的な要因について、ゴットマン博士の研究をもとに探っていきましょう。
あなたの夫婦関係は大丈夫?「行き詰まり」の4つのサイン
行き詰まりは、単なる意見の不一致ではありません。それは、夫婦関係に深刻なダメージを与える危険な状態です。あなたとパートナーの関係が「行き詰まり」に陥っていないか、以下の4つのサインでチェックしてみましょう。
- 解決策のない同じ議論を何度も繰り返している。
- その問題について話すとき、ユーモアや愛情、共感が全くない。
- 時間が経つにつれて、お互いの立場がより一層硬化し、意見が両極端になっている。
- 妥協することは、自分の信念や価値観、自分自身を裏切ることだと感じ、不可能に思える。
これらのサインに心当たりがあるなら、あなた方の対立は単なる「問題」ではなく、「行き詰まり」に陥っている可能性が高いと言えます。
一見すると、「ナプキンは三角に畳むべきか、四角に畳むべきか」といった些細な対立でさえ、行き詰まりの原因になり得ます。なぜなら、その対立は表面的な事柄以上に、お互いの性格、育ってきた環境、そしてライフスタイルにおける根本的な違いを反映しているからです。
対立の根源にある「隠された夢」
では、なぜ夫婦は行き詰まりに陥ってしまうのでしょうか。ゴットマン博士は、長年の研究の末、非常に重要な結論にたどり着きました。
それは、**「行き詰まりの根底には、お互いの『夢』が隠されている」**ということです。
ここでの「夢」とは、単に「将来こうなりたい」という願望だけを指すのではありません。それは、あなたのアイデンティティの一部であり、人生に目的と意味を与えてくれる希望、願望、そして譲れない価値観そのものです。
これらの夢は、しばしば私たちの幼少期の経験に深く根差しています。
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例①:温かい家庭の記憶
子供の頃、毎週日曜の夜に家族で外食するのが特別な楽しみだった人は、「日曜の外食」を夢見るかもしれません。それは単なる食事ではなく、「自分は大切にされている」と感じるための、愛の象徴なのです。
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例②:辛い体験の反復を避けたい
逆に、毎晩の食事が両親の怒鳴り合いの場だった人は、家族でのディナーを頑なに避けるかもしれません。その人にとっての夢は、二度とあのような辛い思いをしない「平和な家庭」を築くことなのです。
行き詰まり状態にある夫婦は、お互いの行動の裏にある、こうした「隠された夢」に気づいていません。だからこそ、相手の主張が単なる「わがまま」や「利己的な考え」に見えてしまい、対立が激化してしまうのです。
夢が尊重される夫婦関係
ゴットマン博士の研究によると、幸せで安定した結婚生活を送っているカップルは、この「夢」の存在を理解しています。彼らは、お互いの夢の実現を助け合うことを、結婚生活の重要な目標の一つだと考えているのです。
これは、相手の夢に完全に同意したり、自分も同じ夢を追いかけたりする必要がある、という意味ではありません。重要なのは、お互いの夢を尊重し、それを夫婦の人生設計に組み込んでいく姿勢です。
× 夢を無視した夫婦の会話
妻「大学でもう一度勉強したいの」
夫「そんな余裕どこにあるんだ?子供の教育費だってこれからかかるのに。非現実的だよ」
〇 夢を尊重する夫婦の会話
妻「大学でもう一度勉強したいの」
夫「そうなんだね。どうしてそう思うようになったの?君が学びたいことがあるなら、どうすれば実現できるか一緒に考えてみよう」
カウンセリング事例:一頭の馬が教えてくれたこと
本書では、ルアンとエドという夫婦の事例が紹介されています。夫婦の悩みは、ルアンが飼っている馬「ダフネ」の飼育費でした。エドは家計のために馬を売ってほしいと主張し、ルアンはそれに強く反対。二人は完全に行き詰まっていました。
しかし、カウンセリングを通じて、この対立の根源が見えてきました。
- ルアンの隠された夢: 彼女にとって、ダフネと馬術ショーに出場することは、自分自身の価値を証明するための大切な「夢」でした。
- エドの隠された夢(不安): 彼は、妻が自分よりも馬を愛しているのではないか、自分は大切にされていないのではないか、という強い不安(=妻から一番に愛されたいという夢)を抱えていました。
対立の原因は、お金の問題ではなかったのです。お互いの「夢」と「不安」がぶつかり合っていたのです。
二人は、お互いの夢を理解し、尊重することを学びました。エドは、妻の夢を応援することが夫としての自分の役割だと理解し、ルアンもまた、エドが自分にとって一番大切な存在であることを伝えました。その結果、二人は危機を乗り越え、より強い絆で結ばれたのです。
もしあなたがパートナーとの終わらない対立に苦しんでいるのなら、一度立ち止まって考えてみてください。その対立の裏には、どんな「夢」が隠されているのでしょうか。相手の主張の奥にある、その人にとっての譲れない価値観や願いに耳を傾けること。それが、暗く長いトンネルのような「行き詰まり」から抜け出すための、最初の、そして最も重要な一歩となるのです。
更新日: 2026年1月10日