10. 6章 原則④「パートナーの影響を受け入れる」
相手の意見を尊重できる夫婦は、なぜうまくいくのか?
はじめに:譲れない気持ち、ありませんか?
夫婦の会話で「なんでわかってくれないの?」と感じたことはありませんか? 私たちは本能的に、自分の意見や価値観が「正しい」と信じたくなるものです。心理学ではこれを**認知バイアス(Cognitive Bias)**の一種と呼び、無意識のうちに自分の考えに固執してしまう傾向があることが知られています。
しかし、ジョン・ゴットマン博士は、夫婦関係においては**「パートナーの影響を受け入れること(Let Partner Influence You)」が、関係の安定と満足度を高める重要な鍵**だと述べています。
これは、単に自分の意見を押し殺すということではなく、「あなたの考えを大切にしているよ」という尊重の姿勢を行動で示すこと。この柔軟さが、ふたりの関係を長く、健やかに保つための大切な土台となるのです。
なぜ「影響を受け入れる」ことが大切なのか?
ゴットマン博士の研究では、幸せな夫婦の約80%が、お互いの意見を柔軟に取り入れる習慣を持っていることが示されています。 一方で、特に夫が妻の意見を聞き入れない場合、離婚率は実に4倍にまで跳ね上がるというデータもあります。
さらに、古い価値観に基づいた**「亭主関白型」の夫婦関係では、81%が最終的に離婚に至っている**という衝撃的な結果も報告されています。
これは、「自分が正しい」「自分が決めるべきだ」という考えが強すぎると、夫婦の間に健全な対話が生まれず、関係が硬直化してしまうことを示しています。
心理学的には、これをゼロサム思考(Zero-Sum Thinking)と呼び、「どちらかが勝つためには、相手が負けなければならない」という考え方にとらわれている状態です。 このような関係では、次第に情緒的な親密さ(Emotional Intimacy)が失われ、お互いの心の距離は遠のいていきます。
尊重することは、意見に従うことではない
「影響を受ける」と聞くと、「相手の言いなりになること?」と誤解される方もいるかもしれません。 しかし、ゴットマン博士が提唱する「パートナーの影響を受け入れる」とは、一度相手の意見を受け止め、理解しようとする姿勢を持つことを意味しています。
〇「そういう考え方もあるんだね、面白いね」
×「それは違うよ、普通はこうでしょ?」
このように、相手の意見にすぐ反論するのではなく、いったん受け入れる「受容」のプロセスを挟むことが大切です。 これは、**心理学でいうアサーティブ・コミュニケーション(自分も相手も大切にする対等な対話)**に通じるスキルです。
また、脳科学の観点から見ると、人は自分の意見が否定されると**「防衛反応(ディフェンシブ・リアクション)」**を起こしやすくなり、前頭前皮質の活動が低下し、建設的な話し合いが難しくなることも分かっています。
つまり、「まず受け入れる」ことは、建設的な対話を生み出すための**“脳にも優しいアプローチ”**なのです。
ふたりの「決め方」に目を向ける
夫婦のすれ違いは、意見の違いそのものではなく、「どう決めるか」というプロセスの違いから生まれることが多いものです。
お互いの意見を出し合い、どちらか一方に偏らない形で合意点を見つけていく。この**「共同意思決定(Joint Decision-Making)」の姿勢こそが、信頼関係を深める鍵**になります。
「譲ったら負け」ではなく、「影響し合える関係こそが強い関係」。 ふたりで決めた選択は、一方的に押し付けられたものよりも、ずっと満足感の高い未来を生み出します。
次回は、今日からすぐに実践できる「パートナーの影響を受け入れる」ための具体的な行動習慣をご紹介します。
更新日: 2026年1月10日