【B-2】「私は誰?」〜パートナーに知ってほしい私の3つの面〜
どんなに長く一緒に過ごしていても、「本当の私」をどれだけ伝えられているでしょうか? 「私の好きなこと」「得意なこと」「日々感じていること」。それらは言葉にしなければ、相手にはなかなか伝わりません。 ジョン・ゴットマン博士は、良好なパートナーシップの基盤として”愛情地図”を重視しています。 これは、「相手の内面世界をどれだけ知っているか」という心理的な地図です(Gottman & Silver, 1999)。 この章では、自分自身のことを丁寧に見つめ直すための3つのテーマと、そこからパートナーと対話を深めていくためのヒントをお届けします。
1. 私の努力と誇り
これまでの人生で、あなたが努力してきたこと、誇りに思うことは何でしょうか? どんなに小さなことでも、自分が「頑張った」と感じられる経験は、あなた自身のかけがえのない一部です。
たとえば── 資格取得への挑戦、部活動やスポーツでの努力、病気やケガからのリハビリ、人見知り克服のための社会活動参加、仕事や育児との両立、家庭や家族を支えるための努力…。 こうしたひとつひとつの積み重ねが、あなた自身の人生を形づくってきたはずです。
思い浮かんだことがあれば、そっとノートに書きとめてみてください。 ・これまでの人生で、「がんばったな」と思えることは? ・周りに言っていないけれど、自分では誇りに思っていることは? ・ささやかなことでも「続けてきたこと」はある?
これらを深めることで、あなたの”価値観”や”エネルギーの源”が見えてきます。 心理学でいう自尊心(self-esteem)は、自分で自分の努力や歩みを肯定的に見つめ直す力です。 それを言葉にし共有することで、パートナーとの間にもやさしい信頼感が生まれていきます。
2. 私の傷と癒し
人生には、どうしても避けられない痛みや苦しみがあるものです。 あなたがこれまで経験してきた「傷」について、少し振り返ってみましょう。
たとえば── 失望、試練、苦難、ストレス、苦しみ、トラウマ、誰かとの関係悪化、性的暴行、虐待…。 こうした経験が、心に深い跡を残していることもあるかもしれません。
過去のつまずきや、傷ついた経験。 それらを思い出すのは少し勇気がいることかもしれません。 でも、「こんなことがあった」と言葉にできたとき、自分の内面が少しほぐれていくのを感じる人も少なくありません。
・子どもの頃、傷ついた経験や忘れられない言葉は? ・つらかったけど乗り越えられた経験は? ・本当は、あの時どんなふうにしてほしかった?
こうした記憶は、感情の記憶として心に深く残っています。 それを整理することは、意味づけ(meaning-making)や”癒し”にもつながり、パートナーとの関係を深める大切な対話になります。
3. 私の感情の世界
あなたは、日々の中でどんな感情をよく感じるでしょうか? 感情は、その人の個性や”生き方のクセ”を映し出す鏡のようなものです。
嬉しいときのリアクション、怒りや不安の表れ方、悲しみにどう寄り添ってもらえると安心できるか。 これらを知ってもらえるだけで、夫婦のすれ違いはぐんと減ります。
これまでの人生で、特に心に残っている感情体験には、どんなものがあるでしょうか?
たとえば── 喜び、愛情、怒り、悲しみ、恐れ、悔しさ、安心感、裏切られた悲しみ、未来への期待感…。 こうした感情が心に強く刻まれた瞬間を思い出してみてください。
・嬉しいとき、誰に・どんなふうに伝えたくなる? ・怒りがわいてきたとき、自分の中では何が起きてる? ・悲しみに沈んだとき、どんなふうに寄り添ってもらえると安心できる?
感情の粒度(emotional granularity)やメタ認知(meta-cognition)といった概念は、感情を細やかに把握し、言語化する力が人間関係において非常に役立つことを示しています。 自分の”感情の取扱説明書”をパートナーに手渡すような気持ちで、少しずつ共有してみてください。
おわりに
これらのテーマは、「私は誰?」という問いに少しずつ輪郭を与えてくれるものです。 ふだんの生活ではなかなか触れない感情や価値観を共有することで、パートナーは”あなたという人”をより立体的に感じることができるでしょう。
安心して心を開ける関係には、「私はこういう人だよ」と言える「心理的安全基地(secure base)」があります(Bowlby, 1988)。心理的安全基地が育まれると、ふたりの間に深い信頼と自己開示の土壌ができ、困難なときにも支え合い、前向きな関係性を築き続ける力になります。
あなたの言葉で、“あなたのこと”を伝えてみてください。
更新日: 2026年1月10日